昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
風間んちにまともに入るんは、三回目くらい。

飲み会で大勢で来たのばっかで、一人で入るんは、これが初めてやけど。

帰り一緒にご飯食べ行って、暇なんやったらDVDでも借りて観よかってことになった。

TSUTAYAでレンタルしてったのは、風間もウチもけっこーハマっとるお笑いのやつ。


「じゃあ、生茶で」

「はいよ」


コポコポて音を立てて、お茶にしては薄い、黄金色みたいな液体がグラスに落ちていく。


風間んちは、男の部屋!!みたいにガラーンとものがないわけやなくて、本とかCDがけっこういっぱいある。

棚があるのにその辺にケースが積み重なったりしとって、ちょっと親近感が沸いた。


「お腹いっぱいやと眠なるなぁ…」


さすがに大盛りのさらにもいっこ上の「男盛り」とかいうやつ注文してもたのは調子乗りすぎたわ。

…あ、夕飯のカツ丼の話やけどな。


風間がセットしてくれたDVDが始まるのを待ちながら、ベッドの端にぐでーんと頭をもたれかけさせる。


「どんだけリラックスしとんねん…」

「へ?あ、始まったで風間!!」

「…まぁええわ」


風間は一回ため息ついて、ウチの隣に、でもちょっと隙間をあけて座った。


風間が入れてくれた生茶飲みながら、ふと思う。

間近にある風間の髪。

その毛先は、ちょうどグラスの中の生茶の色に似とった。


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