昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
いや。
いや…あの。
え…待って待って。
手ぇ握られたまま、固まって動けへん。
「……あ…、」
え、なに、どうしたらええん?なに言うたらええん?えーなにこの空気なんかこういうの慣れてへんていうか慣れてませんって!!
あかんあかんあかん、わー、ちょ、どーしたらええんですかー隊長ー!!(誰や)
「肉まん」
「…は?」
「あ、いや…食べたいな〜おもて。肉まん…」
フリーズした頭ん中、とっさに出てった単語がソレやった。
肉まんって…。
別に真冬でもあるまいし。しかもウチ、ピザまんのが好きやし…。
「…なんかもう優子さぁ……」
「へっ、ハイ!?」
「…いや…もうなんでもナイです……」
風間の顔は、また力無くベッドカバーの中に逆戻り。
いつの間にかDVD再生時間が結構進んどって、テレビん中の芸人の衣装はなぜか全身タイツに変わっとった。
とりあえず落ち着くために、お茶に手ぇ伸ばす。
一気に飲み干して、二回目烏龍茶、三回目爽健美茶と全制覇。
…だってちょっと、結構、ビックリした。
付き合うってなったけど、態度とかそんな変わらんかったし、フツーの友達みたいな、そんなかんじやったし。
…ていうか。
世間のカップルの皆様はよーこんな甘ったるい空気に耐えられるな!え、もしかしてウチ忍耐力低いん!?最近の若者は我慢できん、すぐキレるって言うもんなぁ。なにじゃあウチって現代っ子!?いっそ近未来!?いやいや優子、我慢って大人には必要な要素やって。何事も忍耐忍耐!!ニンニン!!
「…………。」
あー…もう…
こんな自分嫌やわ…。
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