昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
おおっと。

とっさの反射神経で、ギリギリのところでその足首を掴む。


「いやいやゆう、姿勢的に俺不利やん。仰向けで、ゆうは立っとるやん」

「は、な、せ、こ、の、ア、ホ!!」


ぐいぐいと容赦なく足に力を入れてくるゆう。

全く、とんでもない女や。

最近の男の子はナイーブやから、そんなんじゃなかなか寄ってこおへんで、ゆうちゃん。

別に不細工やないし、よー見たら綺麗な顔をしてんのにな。


「って───うわっ!?」


掴んでた足首を思いっきり引っ張ったら、ゆうがバランスを崩してひっくり返る。

尻餅ついたところを逃さんとすかさず乗り上げて、ゆうを見下ろした。



「…形勢逆転」



ゆうが、泣きそうなめっちゃ悔しそうな顔で俺をにらんでくるから。

やから俺はブハッて吹き出して、なんか、めっちゃ。


めっちゃ、そん時。


ああ、ゆうが俺のイトコで良かったって。


そんなことをな。思ってん。


男と女やったら、結婚でもせん限りいつかは切れてまう関係やんか。

でもイトコって、死ぬまで残るやん。

何しようが、どうしようが、関係は残るやん。



やからな。



「ゆうちゃん。」

「〜なんや…っ!!」

「赤のチェックはちょっと色気ないで」

「…っ!!!!」

「おわっ!?痛…っおま、本気で殴りよったやろ今!!」

「うちはいつだって本気や!!」

「てか乗るなって!重い重いおーもーいー」

「ははっ、形勢逆転やボケ。」


どんなひどいことしてもなぁ。


俺のこと突き放さんとおってくれるん、お前しかおらんやんけ。













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