昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜


いとこ。


ちっこい頃からずっと一緒で、お互いずっと見てきて。

小学・中学・高校。あと大学。どうしようもないクサレ縁。

何しようがどうしようが、なんやかんやで一緒におったから。


ここ最近みたいにマトモに顔合わせへんとか、今まで無かった。


…うわ、またイライラぶり返してった。

ほんま何やねん、ゆう。あんな避けとるみたいに。文句あんならハッキリ言えや。

…いや、飛び蹴りはものごっつい遠慮するけどな。吐くか思うくらい痛いねんて。絶対そろそろ胃とか出るでな、あれ。


つい先ほどつかんだばかりの、手のひらに残るゆうの腕の感触。



イトコって、そういやどんな漢字書くんやっけか…。



「まさるっ!!」


弾けた明るい声に後ろを振り向くと、ほとんどピンクに近いブラウンの髪が間近にあった。

服の裾を握る手。濃いピンク色の爪。


イチゴみたいな、甘い匂い。


「…おお。サヤカやん」

「まさる、彼女と別れたってホンマっ!?」


ほとんど抱きつく勢いで聞いてくるサヤカに驚いて目を丸くする。

ああ、うん、せやな。

そう言うたら、サヤカはホンマに俺の腰にぎゅうて巻き付いてきた。


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