昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜


ぱちん、て。



…自分の中で、何かがはじけた気がした。



ふらふらした足取りのまま、アパートから遠のく。

倦怠感と疲労感、それに加わる…なんや、この気持ち。



「けほ…っ、」



誰かに追われるみたいに、ただ足を進める。


はやく、はやく。


例えるならきっとそれは焦燥感。


暗い闇の中。

今日は、月の明かりも薄くて。


やっと目に飛び込んだ白い明かりは、コンビニの蛍光灯。

まるで光に集まる蛾のように、そこに吸い寄せられる。



中には入らずに、駐車場の壁にもたれかかる。



そしてそのまま、ズルズル崩れ落ちた。



…うわ、やばいな。

もう力入らへん。

頭、回らへんし…、



布団もぐって寝たい…

泥みたいに寝たい、



つか、なんで俺こんなとこ、おるんやっけ…、



なんでアパート通りすぎてん、あれ、…うわ、口ん中やっぱ気持ち悪い……



なんか、めっちゃ、





──さみしい


「迎えに来いや……、」




───ゆう。



その名前を口に出して、思い出した。



切り取られた映像みたいに、四角い形でくっきり頭に残る。


アパートの下に停められた、一台の原付。





ああ、そっか




───今、風間くんが来とるんや。






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