昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
ポケットん中を探って、ライターを取り出す。
カチカチ数回やったあと、なんとかついた火をタバコに移した。
おもいっきり煙すいこんだら、めっちゃしみて。
頭の中までじんじんして。
「痛……っ、」
でもやめへんかった。
白い煙が、夜の闇に混じって黒に塗り替えられる。
ぼんやりとそれを見つめながら、あー、俺、今めっちゃカッコ悪いなぁとか、思った。
…なんで俺は、アパート戻らんかったんやろ。
なんで今、戻りたないんは、なんでやろ。
『まーちゃんのこと、ほんま好きなんやね』
『…だってゆうのこと、とるねんもん』
───そう、か。
頭ん中で、さくらと交わしたセリフがふと浮かんで、
そんときはじめて、気がついた。
…そうか。
自分のモンやと思っとったんや。
ゆうは、自分のモンやって。無意識のうちに。
ずっと一緒におった。
昔っから、怒られてどなられて殴られて蹴られて、けど、優しくてあったかくていつだってまるごと、受け止めてくれて。
俺がどんな無茶苦茶しても、ゆうだけは居るって。
迎えにきてくれるって。
遊び回っても、どこほっつき歩いても、結局は帰りつく場所。
──昔っからの、俺だけの居場所。