昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
「あ、ごめん。目覚ましセットしとったんやった」
「え?……今何時?」
「…ちょうど5時なったとこ、かな」
かっちゃんのおでこに、ちょっとシワが寄る。
「…ゆう、いっつもそんなはよ起きとんけ」
「……あー、あんな、旅行行くゆうとったやろ?それ今日やねん」
「…………」
「電車めっちゃ早いの乗るからなぁ、寝坊したアカン思て、昨日────」
──セットしたねん。
そう言おうとしたけど、言えへんかった。
できへんかった。
…ぐいって。
頭引き寄せられて。カクンて首が前に折れて、一瞬息が止まったみたいんなって。
「──────、」
…唇が、重なってた。
そのことに気づいたのは、触れてから数秒後。
「────っ!?」
水泳の息継ぎみたいに、ガバッて顔を離す。
頭の後ろの手はまだそのまま。
間近にかっちゃんの鼻先。
…でもそれは、目覚めたばっかの時よりずうっと近い。
「……な、なななに、な……え……?」
「人工呼吸」
「〜じ…っ!?…べ、つに呼吸止まったわけやないやろかっちゃ…」