昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

思いっきり反動つけて、ベッドから離れる。


荒なった息が漏れる口を押さえて、ふらつきそうになるのをなんとか両足でつっぱねて。


…もうとっくに夜は明けとる。

少し家で待っとれば、もうすぐ聞こえるはず。


ウチを迎えに来る、風間のバイク音。



「ゆ────」
「薬っ!!」


思わずおっきい声が、口から飛び出した。


「薬、机に置いとるから。薬ゆうても栄養ドリンクがわりみたいなやつやけど、朝昼晩。もしどうしても具合悪なったとかやったらここに病院の番号と、あとおばちゃんにもメールしといたから!!」

「…ゆ」

「〜もう支払いは済ませた!あとポカリと烏龍茶は冷蔵庫!!以上っ!!じゃっ!!」


かっちゃんの顔をまともに見ることもせんかった。

早口でまくしたてて、部屋をあとにする。



はやく、はやく、はやく。


病院の出口へ向かって一直線…の、はずやったのに。


「…………っ、」


廊下の角を曲がったとこで、足の力がぬけて、その場にへたりこんでしまった。


呼吸が、整わへん。

…いつものすー、はー、が、全然戻ってきてくれへん。


隠すように、なだめるように、両手でぎゅうっと口元をおおう。



…ちがう。

あんなの、熱でうなされてただけ。

あのときウチの名前を何度も呼んだんは、そばにおったんがウチやっただけ。


こんな風になるんは、息が苦しかっただけ。



……はやく。




「…かざま……っ、」




お願い早く来て、風間。
















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