昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
冬の明け方は、真夜中と同じくらい寒い。
吐く息が白い中、肩をすくめてアパートの階段を登る。
なんか、この階段も久しぶりに感じるわ。たった4日間だけやのに。
カラオケで散々シャウトしたせいで、さすがに喉が痛い。
帰ったらすぐのど飴でもなめとこ──
そんなことを思いながら二階の渡り廊下に出て、ウチは思わず足を止めた。
「………?」
ウチの家のドア真ん前に、黒い塊がひとつ。
薄闇の中、目をこらしたけど何かわからへん。
…ゴミ袋、やろか?一体なんの嫌がらせや。
ゴミ袋から赤い液体が──
昔見たホラー番組の内容がとっさに頭をよぎる。
まさか、まさか…なぁ。ブンブンと頭を振って、その映像を振り払った。
恐る恐る歩みを進める。
一歩、一歩。音立てんように。
けどその三歩目。
間違えて履いてきたかっちゃんの靴がデカいもんやから、脱げそうになってベコッと変な音を立ててしまった。
「─────!!」
黒い塊が、モゾっと動く。
息を呑む。飲み込んで、また逆流して戻ってきたかと思たくらい。
「…な…ん、で……」
ゴミ袋や思てた黒い塊の正体は、
「………、ゆう」
床にうずくまった、かっちゃんやった。
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