昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

冬の明け方は、真夜中と同じくらい寒い。

吐く息が白い中、肩をすくめてアパートの階段を登る。


なんか、この階段も久しぶりに感じるわ。たった4日間だけやのに。

カラオケで散々シャウトしたせいで、さすがに喉が痛い。


帰ったらすぐのど飴でもなめとこ──


そんなことを思いながら二階の渡り廊下に出て、ウチは思わず足を止めた。


「………?」


ウチの家のドア真ん前に、黒い塊がひとつ。

薄闇の中、目をこらしたけど何かわからへん。


…ゴミ袋、やろか?一体なんの嫌がらせや。


ゴミ袋から赤い液体が──

昔見たホラー番組の内容がとっさに頭をよぎる。

まさか、まさか…なぁ。ブンブンと頭を振って、その映像を振り払った。


恐る恐る歩みを進める。


一歩、一歩。音立てんように。


けどその三歩目。

間違えて履いてきたかっちゃんの靴がデカいもんやから、脱げそうになってベコッと変な音を立ててしまった。


「─────!!」


黒い塊が、モゾっと動く。


息を呑む。飲み込んで、また逆流して戻ってきたかと思たくらい。


「…な…ん、で……」


ゴミ袋や思てた黒い塊の正体は、



「………、ゆう」



床にうずくまった、かっちゃんやった。



.
< 26 / 367 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop