昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
…なんで。
うちの頭に浮かんだんはそれだけで、あとはなんも考えつかんかった。
考えるよりも先に、体が動いてた。
「な…に、なにしてんの!?」
駆け寄って、うずくまっとるかっちゃんを揺さぶる。
かっちゃんの体はめっちゃ冷たかった。
かっちゃんはぼんやりと目を開いて、ホッとしたみたいに笑った。
「んあ…寝て、た…」
「はぁ!?なんでこんな真冬に野宿してんねん!?死ぬ気か!!」
「…ん…死ぬ、かも…」
「立てる!?ええからとにかく中入れ!!」
かっちゃんは真っ白い顔してて、もうほんま雪山で遭難したみたいな顔で。
怒ってたとか、その他の感情を全部忘れてた。
かっちゃんを部屋に転がして、暖房のスイッチもコタツのスイッチも全部入れる。
そんでかっちゃんに毛布をかけて、その上から布団をかけてぐるぐる巻きにした。
「…ほんま、何してんの…昨日の晩、酔っぱらってたんか?」
布団に巻かれてダルマみたいになっとるかっちゃん。
そのほっぺたに手ぇあてたら、氷みたいに冷たかった。
両手で顔を挟んで、ギュウって押しつぶす。へんな顔。
男前も台無しやがな。
「…なんかあったかいモン入れてくるから。ちょっと待っとき──」
その場を離れようとして、でもできへんかった。
かっちゃんが、ウチの手を握ってたから。
「……ゆう、が」
「え……?」
「ゆうが、帰ってこんから」
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