昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜



…涙が、出そうんなった。



男のくせにって、そういう世間一般の常識が目の周りの筋肉に働いて涙を押しとどめる。

けど、そういうの無かったら多分。



「………いっ!?」



がばっ!ぎゅー 。


いきなり前のめりにさせられた体に、後頭部に手のひらの感触。

自分のおでこが、優子の胸元に押し付けられる。


…もしかして、抱き締められてるんかな。俺。


そう思った時、自信なさげな優子の声が降ってきた。


「…うん。ごめん。こういう時どうしたらええんかわからんわ」

「……………ははっ」


優子に頭抱かれたまま、思わずふき出した。

だってなぁ。普通、ドラマのこういう場面で抱きしめるのは男役の方やで、優子。

頭抱きしめられて…抱きしめられてっていうか若干、プロレスの技かけられてるみたいんなってるけど。


でも触れたとこから伝わってくる体温が、目頭の熱を刺激する。直通する。


…どんだけ、男前やねん。

どんだけ包容力あんねん。

どんだけホレさせたら気が済むねん。ほんま。


…ほんま。



< 284 / 367 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop