昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
やっぱかなわん。
…優子には、一生かけてもかなわん。
「かざ…───っ」
優子の腕を振りほどいて、おもいっきり抱き締め返した。
腕ん中にすっぽりうずめて。どっからも見えんみたいに。隠すみたいに。
…触れ合う面積の分だけ、2乗にも3乗にもなって、こんなにも溢れる。
「風間……」
優子は、一回だけ名前を呼んだ。
でもそのあとは、優子は黙って俺に抱かれてて。…多分、けっこう息苦しかったと思うけど。
なんでも言うて。
なんでも聞いて。
言いたいことも、聞きたいことも、ホンマはあふれるくらいあるねん。
「…じゃあ、ひとつだけ…言わせて」
「……うん」
「……どこにも、行かんといて………っ」
…背中に触れる優子の手の力が、返事の代わりに強まった。
─しゃーないよ。
─気持ちって、そんな簡単に動かせるもんやないやん。
─利用してくれてええから。
─まだまさるくんのこと、好きなままでもええから。
優子にたくさん重ねてきた、取り繕った言葉。
…でも今絞り出した言葉は、俺の中の本音やった。