昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
─どこにも行かんといて。
─まさるくんのことなんか、すっぱり忘れて。
─俺のこと好きになって、優子。
わきあがってくる本音ばっか並べたら、俺はほんま自分勝手な人間や。
…なぁ。
俺はまだ見えてへんふりするよ。
ほんまはわかってんねん。
優子の気持ちなんて、優子以上にわかってる。
ほんまはどうしたらええか、もうわかってんねんか。
でも優子の優しさに甘えるよ。
ごめん、だって俺、
「…優子」
「ん?」
「今日。…歩いて、帰りたい」
「え?バイクどないすんの」
「置いてく。…アパートまで、送るから」
「ウチは、ええけど…遠いで?バイト終わりにしんどない?」
「…歩いて、帰ろ」
「ははっ、うん。ええで」
日付け変わった深夜の道を、手ぇつないで歩いた。
胸がいっぱいで、いっつもみたいに話せへんくて。その分優子がずっと話してた。
カッコ悪いなぁ、俺。
でも今日だけ。明日から、ちゃんと立て直すから。
優子の話に笑いながら、相づちをうちながら、ばれんように鼻をすすった。
…ごめん、俺、まだお前とおりたい。