昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
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「さっむ……」



ブルッと身震いして、思わず一人ごちた。


優子をアパートまで送った帰り。

時刻はとっくに1時回ってて、どっちか言うたら2時に近かった。

道路に響く車のエンジン音も、極端に減る。


首ゾクッてするわ。風邪でもひいたかな。

まだ、季節は夏のはずやのに。


(……夏って)


…夏って、こんなにも体ん中がギューて切なくなる季節やったやろか。

さっきまであったかかった左手を握りしめる。


もしかしたら…優子のぬくい体温を感じたから、よけい寒いんかもしれん。とか、思って。



さっき、アパートの下に着いたとき。

「上がってく?」って優子はゆうてくれたけど…今日は断って、自分ちに帰ることにした。


…だって多分。多分な。


今日は、これ以上一緒におったらやばいって、思て。

絶対おれ、アホなことしでかす自信あるし。思い返して恥ずかし死にする思いなんかしたない。


自分をうまくコントロールできんほどの。


…好きすぎたら、人ってこんなにもおかしなんねんな。



──その選択はおうてたんか、まちごうてたんか。




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