昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
かっちゃんの腕が伸びてきて、頬に触れた。


鼻先が近くなって、トン、て当たって、



「────」



唇が、触れた。



その時抵抗できへんかったんは──


いや、違う。


できへんかったんやなくて、抵抗せんかった。


ウチがアゴを引いて、唇が離れる。

心臓がバンバン、カラオケでパンク歌った時のバックミュージックみたいに鳴る。


どうしよう、どうしたらええの。

俯いて目をしばたかせる。


かっちゃんは毛布から抜け出して、いきなり軽く頭突きしてきた。


「い───っ!?」


痛い、て言う間もなくもっかいキスされる。

そのまま押し倒される。世界がひっくり返る。


「かっ───、」



"ゆう"、て。



名前呼ばれたら、なんかもうアカンかった。


かっちゃんの息がうちの息といっしょくたになって、空気は冷たいのに体の中は熱くて。

なんも、考えられんくなってた。



言い訳するなら、きっとこん時ウチはどっかおかしくて。

カラオケオールでぶっ飛んでたし、死人みたいなかっちゃんほっとけへんかったし、実際興味が無かったわけやないし。


…まぁ、うん。


一言でゆうてしまえば「流された」、それだけやねん。

最低やなって自分でも思うけど。




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