昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
風間を大事にする。大事にするから。ウチは風間が大切やから。
やり直しなんていらんねん。だってウチは風間を選ぶから。選ぶとかそんなんエラそうやけど、でも、風間の気持ちを絶対に裏切ったりせぇへんから。
やから────
「かざ──」
「…なんで言わへんの」
風間の声に、目を見開いた。
こつん、て。おでこくっつけて風間が笑う。
泣きそうな顔で、笑う。
「〜まさるくんが好きやって、ごめんってなんで言わへんねん…!!」
「──────っ、」
涙が出るんは、後ろめたいからか、苦しいからか。
どうしようもなく、切ないからか。
「…優子、前に言うてくれたよな。俺に本音ゆうてほしいって。気持ち押し込めてほしないって」
「………」
「…優子が押さえつけててどうすんねん」
泣き笑いの風間は、わしゃわしゃーってウチの髪を撫でる。
ボロっボロ落ちる涙が、浴衣の柄に余計な水玉を増やす。
「優子なぁ…っ、好きやーって言うてんねん。口に出さんでもなぁ、体全部でそう言うてんねん…っ!!」
風間の言葉が、重みをもってぶつかる。
好きやない、好きやない、好きやない。何千何万回唱えても、塗り込めへんかった本心。