昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
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気がついたら、俺ら以外もう誰もおらへんかった。

明らかに効きすぎて寒い冷房が、はよ出てけよみたいにシンシン肌を冷やす。

俺はなんも言えんで、ただその場に座っとくしかできへんかった。



…そん時おれは、何を考えてたんやろ。

真夜中とも明け方とも言い難い中途半端な時間帯。パンパンに張ってた自分の気持ちに、穴が開けられた。



負けやと思った。



負けって言うより…かなわへんなぁって思った。

優子にも、まさるくんにも。ふたりの間にある、絶対的ななにかにも。

多分おれが越えられへんなにかがあって。


泣きたくなった。まさるくんの優子に対する気持ちは、俺が思とったようなもんやなかった。

もっとずっとずっと、深く濃厚な色をして。



…気づいてしまった。



時間とか思い出とか過ごしてきた環境とか。

そりゃどうしても負けてしまうもんもあんねんけど、そんなん全部取っ払って好きでおれる自信があった。

思っとったから。おれの方が幸せにできるて。


けど、ちゃうねん。


優子が望んでるんは、幸せにしてもらうことやない。受け身で待ってることやない。


幸せにしてやることや。






その対象は、俺やない。



…俺やないねん。

























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