昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
あー。あー……。
コレや。コレやったんや。ずうっと探してた、ずうっと足りんかった。ずっと、ずっと欲しかってん。
呼吸を奪い合うキスは、お互いを殺そうとしてるみたいや。
夜の風に触れる素肌も、すぐにかっちゃんの手に覆われる。
触れたかった。
かっちゃんに触れたかった。触れてほしかった。
全部ひっぺがしたら、たったそれだけしか残らへん。
ああそうか。どんなにカッコつけても、可愛くなくても、意地はっても。
…所詮はウチも、普通に女やったんや。
余裕のないかっちゃんの手のひらが、ウチの手のひらを探り当てる。
親指と人差し指、人差し指と中指の間に。
指と指を絡ませて握られたそれは、凸と凹、みたいな。
…ずうっと片方ずつやったもんが、ピッタリ、型にはまったような気がした。
心ん中のカタマリが、少しずつ流れてく。
(……あ、花火)
熱に溶けた頭と体の奥。
涙でぼやけた世界が地響きで揺れる。パーン!と弾ける光の粒は、黒い空を洗うように。
ざまーみろ。かっちゃんより先に独り占めや。
ぎゅう、て抱きついたでっかい背中。広い背中。
…かっちゃんの肩越しに、今年最初の夏花火がでっかく咲くのが見えた。