昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
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「どーしてくれんねんこれ…!?」




ウチがまくしたてたら、かっちゃんは面倒くささ極まりない顔でこっち見やがった。

そんでフッて笑う。なんか余裕ぶって。本気でむかつくコイツ。


「貸してみ。あれやろ、リボン結びしたらええんやろ?」

「〜ちゃうわっ!!そんな簡単なもんちゃうねん!複雑やねん浴衣ゆうんは!!」



あっという間に終わってしまった花火。


花火が終わって、我にかえってみたら…それはそれは、なかなか悲惨な有り様になっとった。

浴衣はぐちゃぐちゃやしはだけてるし帯はかっちゃんがどっか投げてるし。もうすでに浴衣やない。落武者かゆう話や。


なんか熊と戦ったあとみたいんなってるで…!!


正直、着付けなんか覚えきれてへんかった。今日かて一時間以上かけて着付けのDVDと格闘してから出てきてん。この場で今また着れるわけがない。


「うあ!?」


なんとかそれっぽく着てはみたものの、すぐに裾が落ちて。

必死でずり落ちんように押さえるウチを、かっちゃんがまた笑った。…殴ったろか。


「…まぁ、ええやん。帯テキトーに巻いて帰れば」

「〜嫌やわっ!こんなんいかにもなんかありましたー!みたいやんかっ!!」

「え?だってなんかあったやん」

「…………」



…ハイ、誰かスリッパ持ってって〜!

めっちゃ固いやつ!先とがっててもええで、もうそれスリッパやないけど!!


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