昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
「…かっ…ちゃん」
「ん〜?」
「…………ありがと」
虫みたいな声で、呟いた。
かっちゃんが、ちょっと笑った気がした。
「…………」
「…………」
「お、重くない?」
「へ?」
「重いやろ、代わるで!!」
「いや、代わってどうすんねん…」
「あ…はは、そっか……」
「………」
「………」
「…………」
「…………」
「あー…ゆうに潰されるー…」
「だまれアホ」
昔みたいに、アホなことばっか話した。
中身なんてひとつもない、ほんまにアホな内容。
テンポよく弾む会話にさんざん笑って、かっちゃんの肩をどついて、そんでちょっとだけ口元をゆるませた。
……これで、ええんや。
これでいい。これが、一番ええ。
またきっとすぐかっちゃんには彼女ができて、きっと暇な時にはウチの部屋に来て、飯勝手に平らげて。
前みたいに、戻っただけ。
こんな関係いつまで続くかわからんけど、多分また苦しいけど、これでええねん。
決めたから。かっちゃんのこと好きでおるうちは、自分の気持ちに正直でおる。
「……あんな」
ずっと続いとった会話が途切れて、かっちゃんが息を吐いた。
ちょっと真剣なかっちゃんの声は、低いけど、いつもよりちょっとだけ高かった。
「……なに?」
「…………」
「……ははっ、何ぃな」
「ちゃんと、付き合おうや」
かっちゃんが言うた言葉に、耳を疑った。