昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
今、なんて。
「は………」
「…………」
「は…ははっ、なに…なに言うてんの…じょ、冗談でもびっくり──」
「本気や」
本気。かっちゃんの声が、すねた声になる。
「…冗談でそんなこと言うやつがどこにおんねん」
「………っ」
冗談。ウソや。うそ、だって、付き合おうなんて。
天変地異が起こっても、世界がひっくり返っても、もらえるはずない言葉。
はじめから諦めてた。かっちゃんの言葉も、気持ちも、ずっと、ずっと、ずっと。
「…このままの方がええの」
「………そっ、」
「それともあれか。俺みたいなんが彼氏じゃ嫌かいな」
「…………っ」
…言葉が、出てこおへん。
今おんぶされとってよかった。顔見られんくてよかった。しわくちゃやもん。ばあちゃんよりひどいことなってんもん。
なぁ。そんなん言われたら、
…泣いてまうやんか。
「…あんなぁ、ゆう」
…うん。
「付き合おうや」
…ちょっと、ちょっとだけ待ってな。
「…俺なぁ、こんなん認めるん恥ずかしいけど」
かっちゃんが少し笑う。
でもそれは、馬鹿にするときのやなくて、多分きっと、照れ隠しの。
「…好きでしゃーないねん、お前のこと」