昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
かっちゃんにつられたんか約一時間半、ウチも真剣にテレビにかじりついてしまった。

真剣すぎて、マグカップのコーヒーのことすっかり忘れてたくらいや。

気づいたらもうぬるなってしもてた。


「…ゆう、めっちゃ泣いてるやんけ」

「う〜……うっさいなぁ」

「鼻垂れてんで」


かっちゃんは笑いながら、ウチにティッシュの箱を投げてよこす。

思いっきり鼻をかむと、涙でビチョビチョんなった頬を拭いた。


…クマ吉、馬鹿にしてごめん。

めっちゃ泣けたわ。アンタはすごいわ…。


ウチの顔を見てかっちゃんはまだ笑てる。

ムカつくから、コタツん中でカカト落とし一発入れたった。ヴッていう鈍い声がした。


「なぁ、ゆう」

「…なんですか」

「あのカレンダーのマーク、何?日曜になんかあるん?」


かっちゃんが指さす先には、ウチが帰ってすぐに筆ペンで書きなぐった拳のマークが。


「なんかの試合け?」


…しまった。かっちゃんに見られるとか想定してなかった。


「し…試合ちゃうよ!!」

「ふーん?じゃあ何?」

「ほっといてか!!かっちゃんには関係ないやろ!!」


アカンアカン、合コンとかゆうたら絶対からかわれる。

めちゃめちゃ爆笑されるに決まっとる。


あわてまくっとるウチがそんなに面白いんか。

かっちゃんはニタニタしながら「なぁなぁ」って肩をつついてくる。

手で払う。

またつつかれる。


パシッ、ツンツン、

パシッ、ツンツン、



ガシッ。



払おうとしたのに、


かっちゃんに手首をつかまれた。


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