昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
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「まーじーでー!?美穂ちゃんすげーっ!!」

「失礼します、こちらジントニックになります」

「おっ、来たで〜!注文したんだれ?」

「俺俺っ!!オレオレ詐欺!!」

「うわっ、ビミョーなギャグやめてかぁホンマ」

「きゃははは、田口くんめっちゃおもろい〜っ!!」


やっぱ来るんやなかった…。


目の前のジョッキはもう空寸前。

これ何杯目?多分今までの飲みの最高記録やないですか。

しかもオレオレ詐欺って…サムすぎて背筋ぞおっとしたわ。詐欺られた高齢者になった気分やわ。


ひたすらに食べて黙々と飲み続けるウチが今座っとんのは、駅前の居酒屋の一室。


本日の合コン会場や。


しょっぱなの自己紹介からもうすでにこのテンションについて行けてへん。ウチひとり。

合コン慣れてへんとかぬかしてた幹事の風間くんは、フツーに場に溶け込んでらっしゃるからな。

そのオールオッケーなかんじの適応力、見習いたい。


てかこの唐揚げ、しょっぱ…。


お茶を飲むように残っていたビールを喉に流し込む。


「おっ!!優子ちゃんいくなぁ〜!!次なに飲む?」


ウチの目の前に座っとる眼鏡くん(名前忘れた)がドリンクメニューを差し出してくれる。

ジョッキをダン!と机に置いて、ニコリともせずに言った。


「生中も一つ追加で!!」

「おっと〜!!生中入りました〜!!」

「優子っちまじ男前やわぁ!!」

「なんか俺より男気感じるねんけど!!」


…男気なんか本人は一マイクログラムも出してるつもりないんですけど。

でも確かに、他の女の子とは違って明らかに浮いてる気がする。

だいたい服装からして違う。みんなふわっふわしたスカートとかワンピースやのに、ウチはジーンズにロンT。

だってそれしか持ってへんし。


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