昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
ふわふわした髪を揺らしながら、あたしの斜め前にいる女の子が笑う。


「優子ちゃんほんとかっこい〜!美穂惚れちゃいそ〜っ」

「………」

「ええ〜っ!?美穂ちゃん待ってや〜!!」

「ちょ、優子ちゃんライバルやんけ!!」


…なんでやねん。

なんで男からライバル視されなあかんねん。


ずいぶん前に頼んでただし巻きを口に入れる。

最後の一個を残して譲り合うのは日本の美学、みたいにゆうけどもう知らん。


「優子ちゃん、俺弟子入りするわ!!」

「兄貴!!」

「あっ!ビール来ましたぜ兄貴!!」


眼鏡くん(名前忘れた)に頭を下げられながらジョッキを手渡される。

…合コンで兄貴呼ばわりされる女の子って、ウチ以外におるやろか。


対側の端に座っとる風間は、そんなウチを見て苦笑。

そしてその向かいには明らかに風間狙いの女子。目からピンクい光線が出てる。

おまけに口ん中のだし巻きは冷たい。


…もうなぁ、こんなん飲むしかないやろ!!

届いたばっかのビール一気して、叫んでやった。


「〜よっしゃあ!!じゃあ兄貴にもう一杯持って来い!!」

「かしこまりました!!店員さ〜んっ!!」

「兄貴っ!おつまみの方は足りてますか!?」


完璧に開き直って、もっかい一気して、兄貴は酒豪や!!て盛り立てられて、そんでさらに飲んで、飲んで、




…それがアカンかった。




「おええぇ〜……」


トイレの洗面台に頭突っ込む勢いでよっかかる。

気持ち悪い。吐きそう。…っつか、胃まるごと出そう。


「アホ優子」

「うう……」

「いくらなんでも飛ばしすぎや」


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