昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜


低い声と、高い声。

聞いたことある声と、全然知らん声。


二階の渡り廊下から、階段の入り口を見下ろす。


「────、」


そこには二人の、人影があった。


一人は綺麗な女の子、


もう一人は、



「…っちゃん……」



かっちゃん。



それは何日かぶりに見る、かっちゃんやった。

黒髪が夜の闇に溶け込んで。かっちゃんの髪は真っ黒いから、光に透かしても茶色く見えたりせえへんから。


…なに?なんなん、この気持ち。

わからへん。でもどうしようもない焦燥感に襲われる。

足の踏み場が、急になくなってしもた、みたいな。



"あんなぁ、ゆう"



ウチと風間には気づかんと、階段の下で話し込んどる二人。



"…カノジョ、できたわ"



女の子がかっちゃんの服の裾を握る。

上目にかっちゃんを見つめる。

女の子の頭に回る。


かっちゃんの、ゴツい手が。



…かっちゃんの歴代の彼女に、バッタリ遭遇したことはあった。




「─────」




でもかっちゃんとその彼女がキスするんは、見たことなかった。




…見たこと、なかってん。




.
< 46 / 367 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop