昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
低い声と、高い声。
聞いたことある声と、全然知らん声。
二階の渡り廊下から、階段の入り口を見下ろす。
「────、」
そこには二人の、人影があった。
一人は綺麗な女の子、
もう一人は、
「…っちゃん……」
かっちゃん。
それは何日かぶりに見る、かっちゃんやった。
黒髪が夜の闇に溶け込んで。かっちゃんの髪は真っ黒いから、光に透かしても茶色く見えたりせえへんから。
…なに?なんなん、この気持ち。
わからへん。でもどうしようもない焦燥感に襲われる。
足の踏み場が、急になくなってしもた、みたいな。
"あんなぁ、ゆう"
ウチと風間には気づかんと、階段の下で話し込んどる二人。
"…カノジョ、できたわ"
女の子がかっちゃんの服の裾を握る。
上目にかっちゃんを見つめる。
女の子の頭に回る。
かっちゃんの、ゴツい手が。
…かっちゃんの歴代の彼女に、バッタリ遭遇したことはあった。
「─────」
でもかっちゃんとその彼女がキスするんは、見たことなかった。
…見たこと、なかってん。
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