昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
かっちゃんの隣のかわいらしい女の子が、目を輝かせてウチを指差す。


「ぅえ、…あ、ハイ…」

「うわぁ、初めまして〜!!まさるくんのイトコやんなぁ〜?会ってみたいなって思ててん〜っ!!」


ウチの手ぇ握って、嬉しそうにブンブン振る。

…かっちゃん、自分の彼女にウチの話しとるんや。

絶対ろくでもない話しかしてへん確信あるけど。


今回に限らず、かっちゃんの彼女とまともに接触したんはこれが初めてやった。

突然すぎて、気まずさとか嫉妬とか、そんなん思う暇もない。


えらい人なつっこい子ぉやな…。

半ば関心してたら、その"かっちゃんの彼女"は、可愛い顔でドえらいことを言い出した。


「今からおうちでご飯するん〜?」

「え、あ、そうやけど…」

「ウチらもやねん〜!!せっかくやし一緒に食べん!?」

「ああ、一緒に……って、はぁ!?」


驚きのあまりチューハイやらビールやら入った袋、落としそうになった。


「なぁまさるくん、あかん〜?ウチゆうちゃんと仲よーなりたい」

「ええよ?俺もさくらがそう言うてくれたら嬉しいし」


にっこり男前な顔で微笑むかっちゃん。


…うわ、めっちゃキモい!!うすらサムい!!なに猫かぶっとんねんお前!!

非難した目で見たけど、かっちゃんは爽やかぶった笑顔を崩さへん。


背筋にぞぉってしたものを覚えながらも、


「な?」


って、可愛い女の子にニッコリ言われたら。



…頷く以外、ウチにどんな選択肢があったっていうの。














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