昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
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「はよビール」

「…ハイハイ」


うちのチューハイと、アホ野郎のビール、な。


抗議するんも面倒やから、かっちゃんに言われたとおりしぶしぶ冷蔵庫に向かう。


「ゆうー!!冷凍庫に枝豆あんで」

「…やから?」

「レンチンして持ってってか」


じ ぶ ん で う ご け こ の ア ホ


ばあちゃんにも勝る呪いを込めて心で言い放った。

冷凍庫に手をかけようとした時、ウチの腕にふっと何かが触れる。

驚いて引っ込めたら、それはさくらちゃんの細い腕やった。


「ゆうちゃん!ウチもお手伝いさせて〜」


ニッコリ微笑んでウチを見るさくらちゃんは、近くで見てもホンマ可愛かった。


「あ…ありがとう…」


大皿を出して、手際よく枝豆をその上にのせる。

なんもすることがなくなったウチは、その動作をただボーっと見てた。


「ゆうちゃんとまさるくん、仲良しなんやね〜」

「…え?」

「イトコやなくて兄弟みたい!!まさるくんなぁ、ウチとおるときはあんなおしゃべりちゃうもん〜!!」


…それはただ単に、ウチが女として扱われてないことの象徴やないやろか。


なんとも言えない複雑な気分で、リビングの方を見る。

かっちゃんと風間はフツーに楽しそうに話してて、今さっき初対面やったなんて思わへん。

でも風間は、きっとビミョーな居心地悪さを感じとると思う。ウチの気持ち知っとるわけやし。


風間がおってくれてホンマ良かった。

もし三人やったら、うまく笑えてた自信ないし。


…なんか巻き込んでしもたみたいでごめん、風間。


「ゆうちゃん?」


ボーっとしとるウチを心配したんか、さくらちゃんが不思議そうな顔で首をかしげる。


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