昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
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「そろそろ帰ってきぃや」


久しぶりに聞くお母さんの声は、相変わらずどっしりしとった。

いきなり実家からかかってきた電話。

特に用事はないらしく、全く音沙汰のないウチの安否を心配してとのことらしい。

なんせ最初の第1声が「生きとる?」やったから。


電話の向こうで、テンションの高い外人の声がする。ワンツー・スリーステップ、ワンツー・スリーステップ。


…お母さん、今なんかのエクササイズDVDやりながら電話かけとるやろ。


「…うん。わかっとるって」

「アンタこの前もそうゆうて一本も連絡よこさんかったやろ!!」


耳元で大声出されて、頭がキーンてなる。

お母さんは興奮すると声がデカなるクセがあるねんな。


携帯をちょっと耳から離して、小言を聞く。

一通り言い終えたらしいお母さんは、ふう、とため息をついて次にこう言った。


「まさるくんは元気しとるん?」

「…知らん」

「知らんことないやろ」



…ホンマに知らんし。



あの変なメンバー…かっちゃんと、かっちゃんの彼女と、風間と、ウチで飲んだ日から何日か。


かっちゃんとは、ロクに話してへん。


かっちゃんがウチの部屋に来るんは暇なときで。

つまりそれは、かっちゃんが今暇やないってことで。


ウチに夕飯をガッツきにこおへんのは、さくらちゃんがちょくちょく通い妻して作ってあげてるからやと思う。

かっちゃんの部屋…303号室から、カップラーメン以外の、美味しそうな匂いがよくするから。


電話の向こうでお母さんがまだなんか言いよる。

その時ふいに、チャイムが鳴った。


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