昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
「アンタなぁ、おばあちゃんも心配しとる──」

「あーもー、誰か来たから切るで!?」

「ウソつけ!!」

「ウソちゃうわ!!」


ブチって電源ボタン押して、携帯をベッドの上に投げる。

ピンポーン、てもう一回、チャイムの音。


玄関までのっしのっし歩いて、勢いで確認もせずにドアを開けた。


「………」

「牛丼食いたいねん」


ドアの向こう。そこには、無駄にデカいかっちゃんがおった。

うっかりしとったら玄関くぐるとき頭打ちそうや。


って、いうか。


「………は?」

「やから、牛丼食いたいねん」


…いきなり欲求をつきつけるん、やめてほしい。


「食いにいけばええやん」

「一人で行くん寂しいやん。ついて来いや」

「…嫌やわ。スッピンやもん」

「いじってもたいして変わらへんやんけ」


バシッ、ドゴッ、ゲシッ。


多少の効果音のあと、約十分後。

チェーン店の牛丼屋のカウンターに並ぶ、スッピンで眉なしのウチとほっぺたが片っぽだけ赤いかっちゃん。


…ハイハイ、やっぱり結局断れへんねんな。



ってか、かっちゃん。


…かっちゃん、久しぶりや。



割り箸、割るのん失敗した。片っぽが異常に細い。

頼んでソッコーで出てきた牛丼並盛りに手をつける。

かっちゃんはめっちゃ幸せそうな顔して、

「やばいビール欲しなってった」

とかゆうてた。


…将来絶対ビールっ腹やで。


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