昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
上に吊されたテレビはいつの時代かっていうくらい古いブラウン管。

その中で粗い野球中継の映像が流れる。


何だかんだで、かっちゃんと二人でご飯食べるんはホンマのホンマに、久しぶりやったりした。

かっちゃんのこと好きやって自覚してから、初めてやないかな。


今、となりにかっちゃんがおって。


ウチの心境はホッとしたような、苦いような、複雑なもんやった。


「何ぃな、ゆう?」


チラッてかっちゃんを見たら、ちょうど目が合ってしもた。


「…なんでウチ誘ってん。彼女とこればよかったやん」

「アホか、牛丼屋なんか女の子連れていけるわけないやろ?」

「…じゃあ今アンタの隣におるんは誰や」

「ゆう。女の子ちゃうから大丈夫──」
「すんませーん店員さんっ!!この人の牛丼から肉全部抜いてもらってええですかー!?今すぐ!!」


ウチの申し出に店員さんはニッコリ笑って、

「肉抜きでもお値段の方変わりませんがよろしいでしょうか?」

って言ってくれた。気の効く店員さんや。

かっちゃんは必死に肉をかき集めて口に入れる。全部。

アホや。先に全部食べてもたら結局あとただの米やんけ。


…ウチ、かっちゃんにとってどこまでも女じゃないんやなぁ…。


はぁ、とため息をついて椅子にもたれる。


そんなウチを気にもとめず米をかき込みながら、


「ユウ、春休み忙しいん?」


かっちゃんが、そんなことを聞いてきた。


「え?別に…バイトとか、たまに予定入れとるくらいやけど──」

「旅行いこや」


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