昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜
椅子にもたれたまま、そのままずり落ちそうになった。


「え、…え?なに…」

「やから旅行。温泉一泊二日」

「お…温泉!?」


旅行、て。

なに?何ゆうてんの、かっちゃん。

なんでウチにそんなん──


かっちゃんが、ウチの牛丼の肉一枚取った。頭ん中慌てすぎて、怒るタイミング逃した。


「いや、さくらがな」

「…………は?」

「さくらがゆうてんねん。ゆうと、風間くんと4人で旅行したい〜て」

「…………」


…なーんや。そういうことかいな。


「俺は二人でエエんやけどなー、さくらがどうしても一緒に行きたいゆうて。頼んでみてって言われてん」

「………」

「暇な日でエエし。あかん?」



「……別に、…ええよ」



声がかすれそうになるん、必死でこらえた。

ビックリするくらい食欲無くなった。牛丼まだ半分残っとるのに。


何が楽しくて四人で旅行やねん。イライラする、ムカムカする。春休み全日忙し死にしそうや〜ゆうといたらよかった。あー…もう、なんか…



なんでかっちゃんが好きって気づいてしもたんやろ。

知らんふりしとったらよかったのに。

なんで。



「風間くんにも言うといてか……、どした?」

「………」


なんで、なんで。



「…肉取ったん、そんなに怒っとるん?」




…なんでかっちゃんなんか、好きになってしもたんやろ。














.
< 62 / 367 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop