狐憑きの夜~始まりなる終わり編~

 やがて、おおよその話が終わると涙はある事に気付いた。

(まだ席を決めてないわ・・・まあ、昨日の内に机と椅子は運び込んであるけど・・・)

「さてと・・・そろそろ席でも決めないといけないわね~」

 そう言うと、涙はゆっくりと全体を見回す。昨日運んでおいた机と椅子をさがしているのだ。やがて、涙は探し物を見つけた。それは、丁度良く剛の席の横に置いてあった。

(う~ん。今から決めると時間かかりそうだし、ホームルームの時間って思いの他短いのよね・・・まあ、それじゃあこれで決定ね)

 「それじゃあ、丁度机と椅子が剛君の所にあるから、席は剛君の隣って事で。良いわね?剛君」
「あ、はい・・・」

(ま、マジかよ~!朝、クラスに来た時から気にはなってたけど、まさかこんな事が起きるとは!転入生とまともに話せるか心配だし・・・)

 剛がそうこうしている間に、飛鳥はもうそこまで来ていた。

(え~い!もう、こうなれば腹をすえる!)

 剛が決心したその時である。

「先生の話聞いてたと思うけど、私飛鳥。よろしくね~」

 ほのかに顔を紅くして、飛鳥は朗らかに言った。
 一方、さっきの決意は何処へやら、剛は緊張で顔が引きつっていた。

「よ、よろしくな。おれ、金沢剛って言うんだ。」

 こうして、悲しく切ない物語は動き出した……。
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