狐憑きの夜~始まりなる終わり編~

学校

 飛鳥が転入して来てから月日は過ぎて一ヵ月後、彼女はすっかりクラスに馴染んでいた。
 それは、当然の事ながら彼女の努力によるものだが、その他にも馴染めた理由があった。
 そして、ここ一ヶ月、それを一番感じているのは隣の席の剛であった・・・

「おはよ~」

 剛が半ばダルっぽくそう言いながら教室のドアを開ける。
 何故、剛に元気がないのか?その理由は、剛の後ろに堂々といた。

 タケルが、今日も「お兄さん、怪しく思っちゃうな~?」だとか、「タケちゃんは騙せないよ~ん?」などと通学中に絡んで来たのである。通学中、実にウザク感じるのだが、本人に悪気が無いので、責める訳にもいかず、かと言って行為が止まる事もなく、今日も剛の後ろにくっついて来たのだ。

 備考だが、タケルの後ろには、ミオがいる。
 そんなこんなで、疲れている剛が教室の自分の席を見ると、いつものように飛鳥が自分の席は横のはずなのに剛の席に座り、机一杯に色々な本を広げて調べ物をしていた。

 思わず、剛の口から深い溜息が出る。
 そんな剛に気付く事なく、ミオがタケルの横から顔を覗かす。

「なんだ飛鳥ぁ~。おめ~、また調べ物してんだか?」
「うん。今日はカエル男についてなんだよね~」
「それは良いんだけどな、飛鳥ぁ~」
「ん?何~、剛君?」

「何でいつも俺の席でやるんだ?自分の席が在るんだから、自分の席でやれよな~」
「まあまあ、いいじゃないの~?お兄さんは、勉強家な飛鳥に関心だけどな~」
「そういう問題じゃないだろ?今は、何故自分の席でやらないかだ」

 剛がそう言っている間も、聞いているのかいないのか、飛鳥は生返事をしながら本をめくっている。飛鳥の馴染めた理由、それは顔には似合わないこの趣味にあった。
 飛鳥は、転入してからネッシーやチュパカブラというUMA(簡単に言うと未確認生物)を調べている。

 以前、剛が何故調べているのかと訊いたところ、「ロマンがあるから」という答えにもならない答えで答えられた。
 そんな飛鳥の様子を見ながら、ミオは苦笑する。

「まあ、本人の趣味じゃっちゃけ~。しょうがないんじゃないん?」
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