北千住奇想曲
「じゃあ、本題なんだけどさ。その彼とケンカして出てきたんでしょ?何でケンカしたの?」

谷沢藍はちょっと気まずそうな顔をしたが、
「彼が約束を破ったから」
その続きを待ってみたが沈黙。

「とにかくさ。約束を破るのはダメでしょ?」

「まあ、約束によるんでしょ・・・。そんな大切なものなら破っちゃいけない気がするけど」

無難な返し。もっと突っ込んで欲しいのか?
先ほどの突っ込み不足の指摘もあったのでもう少し突いてみる。

「で、なんの約束?」

「お金の事。それと将来の事」



それはだいぶ重い。
そして、かなり大人の約束だ。
ぼくが聞いてどうこう言えることもないだろうに。

「ふーん。将来を約束してそのためのお金を貯めて・・・みたいな?少し早いんじゃないの。まだ二十一でしょ?」

谷沢藍は首を振る。
「でも、彼は五つ上だし。それに貯めるというか借金がらみだから少し違う」

あの谷沢藍が男女間のリアルな話をぼくにしようとしている。
こんな状況は、高校時代は想像もできなかった事だ。
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