北千住奇想曲
ぼくらの高校というのは、県内の高校の学業レベルで言えば「中の上」、もしくは「上の下」。
そこそこの進学校の部類だった。

ただし、それは入学時点の話。
中学時代は「中の上」、もしくは「上の下」のレベルだったはずの学力は入学して卒業する頃に平均して「下」のレベルまで落ちる。
ぼくらも例外なくこの高校の伝統に従って、自由に怠惰に学校生活を過ごし、高校3年時には大学進学なんて夢のまた夢という状態だった。

谷沢藍もぼくも例外ではない。
ぼくらは、みなこの高校生活が気に入っていた。
だけど、漠然とした不安はずっと抱えていた。

ずっとこんな事は続かない。
いつかはぼくらは卒業していく。
その時に何をすればいいんだろう。

谷沢藍はその事を特に気にしていて、ダレカレ構わず聞いて回っていた。

「ねぇー、卒業したらどうするの?」

「そうだなぁ、シュウカツしてみるわ、一応」
「おれはしばらくフリーターして金ためる」
「わたしは専門・・どこかは未定・・」

そんな会話が周囲されていたが、ぼくは無関心だった。
だけど、なぜか谷沢藍はぼくの進路も気になったらしい。
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