北千住奇想曲
「ヤマダくんってさ、進路どうするの？」
谷沢藍からのファーストコンタクトがこれだった。

ぼくは確か、
「進学はないから働くが仕事先は選ばない」
そんな感じのことを言った。
すると谷沢はそれに大層関心した様子だった。

彼女はこれをきっかけに「ヤマダくんはクールだ」と言い始め、クラスの連中もどんどん影響されていった。

ただ、面倒で友達を増やさず、就職だって家に金がないからできないだけで、まあお金の問題で進学できないのはわかってたけどやるせない感じがしてて、仕方ないので拗ねてどうでもいいや、ってのが偽らざるぼくの気持ちだったんだが、彼女の「偏見」によってなぜか最高のプラス評価を下されることになった。

まあ、そんなこんなで卒業するまでの1年間、谷沢が何かあるとぼくに何かを聞き、それに感心し、クラス全体に浸透させるという、謎のサイクルを何度か繰り返すことを続けた。

その結果、ぼくらは、単なるクラスメート以上、普通の友達以下くらいの関係を築く事になった。


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