北千住奇想曲
谷沢藍はかわいい。
それはその通りだが、なんというか昔あったものが無くなっているという気も一方では感じたところだった。

デニーズを出たところで彼女と別れ、すぐさま止まっていたタクシーに乗って腰を落ち着けたところでぼくはその喪失の部位について考えていた。

基本的に見た目も性格も変わった印象はない。
失われたモノは彼女本体ではない。
確かに秘密のバイトがどーとか言っていたが、そういう問題でもない。


だとするとなんだろう?


眠い頭で考えているせいなのか、なかなか答えはでない。


ん?ちょっと待てよ。
同窓会の時も似たような気持ちになったな、と思い出した。
あの時、泣いていた谷沢藍と一緒にコンビニ行ったときに感じた事。

そうか「友達」だ。

高校時代はやたら友達がいたのに、同窓会の時も今日も「友達」の影がまるで感じられなかった。

まあ、今日とか同窓会とか「友達」の影なんて感じなくても普通っちゃ普通なんだが、あの谷沢藍だ。

あの谷沢藍に友達の影を感じない。
彼女から失われたモノ。

それは友達?
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