北千住奇想曲

3

翌日は朝が辛かった。
しかし、今日は遅れるわけには行かない。
朝食を抜いていつもより早めに家をいそいそと出て、越谷駅から混雑した東武伊勢崎線に乗り込んだ。

眠い、眠すぎる・・・。
そんなわけで北千住駅で一休み。
駅内のカフェ「イースト・エンド」で朝食セット380円を頼んだ。

朝食セットっていっても半分のトーストにちょこっとスクランブルエッグとサラダが添えられたプレートとコーヒーがつくだけだが、それがちょうど良い。

昨日は、この駅前で谷沢藍と話をしていたんだ。
それは、昨日の事なのにぼやけた遥か昔の出来事のようにしか考えられなかった。
結局、昨日はタクシーで考えながら寝てしまって、さらに家ではさっさとシャワーを浴びてそのままベットに直行。
谷沢藍の事を特に何も考えることなく今に至っている。
朝食をかき込みながら昨日の事を思い起こしてみた。


谷沢藍。

コワモテの彼氏。
将来とお金。結婚と借金。
そして、秘密のバイト。
訊き損ねた同窓会の涙の理由。


考えてみると謎が多いままだ。
近いうちに借りたタクシー代も返す事になるだろうし、そのタイミングで訊いてみるかな、と軽く考えた。

お酒でも入ってない限りは訊けないだろうけど。

そんな事を考えながら朝食を食べ終え、北千住から日比谷線に乗り込んだ。

さあ、仕事だ。がんばろう、ITドカタ業。
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