北千住奇想曲
「お客さーん、マッサージイカガー」
突然後ろから声がかかる。

めんどくせ

振り向きもしなかった。

するとまた同じ声で同じセリフ。

勘弁してくれ

すると、
「ねぇヤマダくんでしょ?」
その人は呼びかけた。

え?ぼく?

一瞬財布を確認。
大丈夫だ。
落としてない。

振り返るとそこには女の子。
記憶にある顔。

いや、あるどころか記憶に焼き付いたまま忘れる事ができない。
そんな特別な女の子。
谷沢藍がそこに立っていた。


びっくりしてぼくはしばしの沈黙。
「あ、あ、あれ?人違いかな?スミマセン、あの知り合いに似ててふざけてただけで・・・」

ぼくの沈黙を取り違えて慌てる彼女。

「だからマッサージなんてウソですから!いや、こっちこないでー警察呼びますよ!」

完全に恐慌状態だった。
いやはや、相変わらずだ。

「谷沢、落ち着けって。間違いなくヤマダだから」

じっと彼女はぼくの顔を見る。
相変わらずの大きな瞳。
高校の頃、あの瞳で見つめられ一方的に恋をしたオトコがどれだけいたことか─。

彼女にしてみれば、そうやって相手の目を覗きこむのは「単なるクセ」だったらしいが。
その瞳がぼくを確認する為にじっと見つめる。

そして安堵の顔。
ヤバイやっぱかわいい。
そんな再認識をさせられた再会だった。
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