北千住奇想曲
あさみさんは入社して間もないし、アクの強い社長が嫌いではないだろうが、慣れていない。
彼女は、すがるような目でぼくを見る。

仕方ない。

「社長、ぼく昨日もお付き合いしたじゃないですか。昨日は終電逃して自腹でタクシーでしたよ。しかも今朝の会議は中止になってるし」

非難の気持ちをぶつけてみたが、まるで動じることなく社長は言う。

「何甘ったれたこと言ってんの。あれも仕事のうちよ。スケジュールだってさ、日付変わってすぐに変更したよ。ヤマダちゃん、メールでスケジュール変更受信してないだろ」

うちの会社ではスケジュール管理のウェブツールを作っていて、社内ではそれを使っていたりする。
つまり自社製品を使いこなしていないお前が悪い、と間接的に言っているわけ。

さすが社長、ぼくらにはない発想と論理構成をもっていらっしゃる。そこには痺れるけど、憧れはしない。

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