北千住奇想曲
「ごもっともです」
ぼくはへりくだった返事をしてみた。


しかし、続けて反撃。

「社長と食事をしながら酒を酌み交わす、これは大事な仕事ですよね」

「そうだろ」

「じゃあ、食事代は経費ですよね。タクシー代もか。あ、あと残業代もか」

「・・・」

社長撃沈。そして、暫し沈黙。


「うーん、ヤマダちゃん。やるねぇ。交渉上手になったもんだ」

まあ、残業代なんてうちの会社から頂いた事はないけれど。

「じゃあ、こうしよう。ヤマダちゃんの成長を祝って俺にご馳走させてくれ」

かなりの譲歩だ、ここらで手を打つとしよう。

「もちろん、あさみさんにもご馳走してくれますよね」

「当たり前だろ」


あさみさんは、ぼくと社長の掛け合いの間、ずっとハラハラしながら見守っていたようだ。

ようやく胸をなで下ろした直後にまた自分の名前がでてびっくっとした。

「どう、あさみさん?今日これからだから無理じゃなければ」

ぼくはあさみさんに声をかけた。
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