北千住奇想曲
ぼくの密かな予想では、せわしなく喋る社長、それに応対するぼく、そして、ただただ頷くだけのあさみさん、という構図でこのまま進行すると思っていた。
しかし、ぼくの予想は早々外れる。
「すみません、注文お願いしまーす」
よく通る女性客の声。
決して大声ではない、怒鳴っているわけでもないがカウンターの向こうの店員さんまで聞こえたようだ。
よく通るいい声だな、と思って周囲のテーブルを見回すがそもそも女性客自体の姿がない。
店自体もカウンターと四人掛けテーブルが五つあるだけで、この位置からはすべてが見渡せるはずなのだが。
店員さんがぼくらのテーブルに向かってくるのが目に入った。
まさかと思い、隣にいるあさみさんをぼくは見た。
彼女はメニューに向けていた視線を店員さんに移して、綺麗な声で注文を頼みはじめた。
「鳥皮ポン酢和え、にんにく丸揚げ、ホタテサラダ、それと牛すじ煮込み、手羽唐だけは三人前でお願いします」
ぼくだけでなく、社長もこれにはびっくりしているようで言葉を失っている様子だ。
仕方なく、ぼくはあさみさんに声をかける。
「あさみさん。早くも酔ってます?」
彼女のビールジョッキの残量は減ってはいるが、まだ半分以上は残っている。
意外とお酒に弱いのだろうか。
「ああ」
彼女は、ぼくらの様子に気がついて瞬時に状況を把握してくれたようだ。
「酔ってるわけじゃあないんです。仕事ではあまりしゃべらないから・・・。普段は猛烈におしゃべりで、言葉遣いもめちゃめちゃなんです。だから意識してしゃべらないようにしてました。すみませーん」
普段が普段なだけに、このギャプには驚かされた。
もともと綺麗な顔立ちなのだが、こうして普通に話しをすると自然に表情も豊かになり、いつもの五割り増しの美人に見える。不思議なものだ。
しかし、ぼくの予想は早々外れる。
「すみません、注文お願いしまーす」
よく通る女性客の声。
決して大声ではない、怒鳴っているわけでもないがカウンターの向こうの店員さんまで聞こえたようだ。
よく通るいい声だな、と思って周囲のテーブルを見回すがそもそも女性客自体の姿がない。
店自体もカウンターと四人掛けテーブルが五つあるだけで、この位置からはすべてが見渡せるはずなのだが。
店員さんがぼくらのテーブルに向かってくるのが目に入った。
まさかと思い、隣にいるあさみさんをぼくは見た。
彼女はメニューに向けていた視線を店員さんに移して、綺麗な声で注文を頼みはじめた。
「鳥皮ポン酢和え、にんにく丸揚げ、ホタテサラダ、それと牛すじ煮込み、手羽唐だけは三人前でお願いします」
ぼくだけでなく、社長もこれにはびっくりしているようで言葉を失っている様子だ。
仕方なく、ぼくはあさみさんに声をかける。
「あさみさん。早くも酔ってます?」
彼女のビールジョッキの残量は減ってはいるが、まだ半分以上は残っている。
意外とお酒に弱いのだろうか。
「ああ」
彼女は、ぼくらの様子に気がついて瞬時に状況を把握してくれたようだ。
「酔ってるわけじゃあないんです。仕事ではあまりしゃべらないから・・・。普段は猛烈におしゃべりで、言葉遣いもめちゃめちゃなんです。だから意識してしゃべらないようにしてました。すみませーん」
普段が普段なだけに、このギャプには驚かされた。
もともと綺麗な顔立ちなのだが、こうして普通に話しをすると自然に表情も豊かになり、いつもの五割り増しの美人に見える。不思議なものだ。