北千住奇想曲
そんなこんなでぼくらはあさみさんのキャラクターを受け入れた、あっと言う間に。

アレコレと質問攻めにしていたのだが、突然あさみさんは宣言する。

「もうアタシの話はお終い。これからはアタシの質問タイムですよ」

ピシャリと言うと矛先はぼくらに向いた。

「お二人は薬指ががら空きですが、未婚ですかー?」

「俺は正真正銘がら空きだな。ヤマダは未婚だが相手はいるよな」

社長は、キャバクラにはあしげく通っているが、特定の相手はいないらしい。

「あっ、あさみさんは薬指にリングありますね」

ぼくはふと気がついて言ったが彼女はふんと鼻をかんで丁寧に拭き取ってから言う。

「これはセクハラ対策。教訓を糧にしてるだけ。ヤマダくんの彼女はどういう人?どこで知り合った?上手くいってんのー?」

いつの間にか「くん」付けだ。

正直なところ、千夏とは上手く行っているとは言い難い。前のバイト先で知り合った気の強い彼女。

最近は、ぼくの仕事で平日はおろか休日も会えない場合だってある。
それがたまりにたまって会う度に不満が爆発する。

初めてのうちは申し訳ないな、という気持ちだったが今ではもういい加減に別れて、この不満の嵐から脱却したいと思いはじめてもいた。
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