北千住奇想曲
谷沢藍にメール送った。内容はあまり考えずに用件のみで。


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ヤマダです

先日はタクシー代を貸して頂き助かりました

借りたものはできるだけ速やかに返せ、この我が家の家訓にのっとり連絡した次第です

日時、場所とも貴方にお任せ致します

ご都合をお聞かせ下さい
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あまりメールは好きではない。彼女に送るメールはだいたい一行で終わる。

それで足りなきゃ電話すればいい。それが利便性を高める行為だと思うんだが、世の中の女性の多くはメールを多用し、無駄な装飾を施すのが好きなようだ。

少なくともぼくの周りはそうだ。彼女の千夏などはぼくに絵文字や長文メールを要求する。

できるだけ要望には応えたいとは思うがなかなか難しい。

そんな事をぼんやりと考えているうちに携帯が鳴動しだした。
早くも返事が着たらしい。
ディスプレイを少しばかりドキドキしながら、確認する。


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りちぎじゃのう
くるしゅうないぞ
ヤマダくん

うわっ。俳句になってるー
って驚いているタニサワです

さて、ヤマダくんの一見丁寧に見えるメールですが、深読みすればバカにされているような気持ちにもなるので浅く読んで返事だけしちゃう事にします

今週末週実家に行くの
金曜日の21時くらいでどうすか?
場所は越谷駅周辺ね



追伸
俳句なのに季語がない、とかいらんツッコミは不要
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まったくもって谷沢藍らしい返事だった。
絵文字、顔文字(アスキーアート含む)、ギャル文字が無いのには好感が持てた。
内容はともかく。


「了解。当日は越谷駅で」
とぼくがメールを返すと

「あいあいさー」
とだけ返事があり、谷沢藍とのメールは一旦終了した。

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