北千住奇想曲
それから僕らは僕の彼女である千夏の話をしばらくすることになった。

正直、愚痴っぽさがでてしまって途中からは自己嫌悪に陥ってしまった。

「ヤマダくんってさ、ちょっとクール過ぎるんじゃないの?彼女の気持ちを考えると女の立場からはわかるって気がするな」

昔からそうだったが、谷沢は人を悪く言わない。彼氏の話は例外だとして。

「そっけない態度だと不安にもなるし、感情的になるのは女性には良くある事だよ。私だってさ、今回の件ではすごく感情的に怒りをぶつける事になったしさ」

「悪気はないんだけど、いつも怒らせちゃうんだよな。なんで怒っているのかともいまいちわからんって場合も多いしな」

少しばかり谷沢藍もヒートアップしたようだった。

「それだよ、それ!悪気のなさ、鈍感さ、マイペース。それが問題なわけですよ」

そんな事を言われると限りなく人格否定に近いんじゃないかとぼくは思う。そんな事をよりによって谷沢に言われると凹む。

落ち込んで黙ってしまったぼくに谷沢は言う。

「でもさ、そういうのも含めてヤマダくんは良いと思うよ。付き合ったら別だろうけどさ・・・」

なんとかそのフォローで沈みかけた気持ちを奮い起こすことができた。

「まあさぁ、そういうすれ違いレベルの喧嘩なんて仲の良さのアピールにしか聞えないけどねー」

そう言うと少しばかり谷沢藍は悲しそうに目を伏せた。
実際に彼女と彼の関係は相当シビアで過酷なんだろう。問題を抱えたまま同棲をしているのだから。
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