北千住奇想曲
「あのね。あの時さ。結構打ち明け話っぽい感じで話していたんだよね。それでみんな実は誰々ってこんな風に思っていた、みたいな話をしていたわけ。今となればたいした話でもないんだけどさ。わたしに関することがそれはそれは個人攻撃みたいに受け取れちゃって。色々うまくいってない時期だったしさ。仲良くしててもそれは学校という限られた空間や制度の中だけだったなって感じちゃってさ。それが悲しくてメソメソとしていたところにヤマダくんが現れたというわけ」

結構大変なんだな。
谷沢藍と言えば誰とでもうまくやってる、そんなイメージしかなかったんだが。
逆にそれはそれで嫉妬みたいものもあったんだろう。

「大変だな。女って」

軽く返した言葉に谷沢藍は噛み付く。

「そういうのはあまり女とか関係ないよ。その時も男の子だって加わってたんだから。やまだくんは遠くでモソモソと誰かと話をしていて気がつかなかっただろうけど」

「全然気がつかなかった。ごめんな」

確かに女だからって事もない。
ぼくらの世代は、そういう意味ではとてもフラットなのだと思う。
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