北千住奇想曲
「まあ、責任の一旦がヤマダくんにもある事は確かだし」

「え?」

思いもよらない発言にびっくりした。
無関心も罪ってことか?

「案外さー、ヤマダくんは女子に人気だったんだよ。それなのに独占的にわたしが仲良くしてて、みたいな事も言われたしね。それに彼女持ちの男の子に色目つかってるとかなんとか」

女子に人気?
そんな事は早めに言って欲しかった。

「そんなに人気なら早めに教えて欲しかった。あの時の彼女とは卒業前には別れたし、だいぶゴタゴタしてたから」

「まあ、あくまで『案外』だから」

すました顔でチクリと言われ、少しばかりは傷付いた。
とは言え、少しでもモテてたなら知っておきたかった。人生における唯一のモテ期だったかもしれないし。

「でも、あの時はうれしかったな。男の子にハンカチを差し出された経験はあれきりだし。いつもクールなヤマダくんの意外な一面を目にした瞬間でもあったな」

「ハンカチを常に持っているなんて気持ち悪いと思うよ、男が」

「そういう男尊女卑的な発想は良くない。それがヤマダくんのマイナスポイントだね」

アハハと声を出して谷沢藍は笑う。
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