北千住奇想曲
さすがに平日の深夜。
人も閑散としたファミレス内の禁煙席に腰を落ち着けると、さっそく谷沢藍は話始めた。

「それにしても、ヤマダくんは最高のタイミングであそこにいてくれたね」
「ん?なにかあったわけ?」
ぼくは先ほどの彼女の様子を思い出した。

「うん。あのさ、さっき北千住に住んでるっていったでしょ?実はさ、同棲してるんだ」

ぼくは相槌だけをうつ。
なぜか気になる相手の事を聞けない。

「それでね、喧嘩しちゃって飛び出してきて、そこでヤマダくんと遭遇したわけ」
「ふーん、それはそれは」
「ちょっと、ヤマダくん?まるで興味がない感じ。相変わらずクールだなぁ」
少しばかり口を尖らせる彼女。


いやいやいや・・・。
正直、聞きたいところを聞けないだけのヘタレなだけ。
別に彼女に恋をしているわけじゃない、でも…─なんだかね─。
あまり聞きたい話じゃない、そんな感じ。
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