北千住奇想曲
2章:A thousand winds
こうして、僕は多くの謎に包まれたままにも関わらず、谷沢藍に特別な感情を抱くようになった。

千夏と別れれば、谷沢の気持ち次第ではすんなりと行くんじゃないか、なんてことをこの時には妄想していた。

しかしながら、現実はそんなに簡単ではない。

人と人との関係というのは、常に一対の関係ではないのだ。

複数の想いが交錯する、多面的で複雑怪奇なラインにぼくらは常にがんじがらめにされているんだという事を学習させられる事になる。

一昔前、千の風になってという曲がオリコンに常駐していた時があった。
死者のやさしい想い…というような感じな曲だったような気がするのだけど、僕は歌詞もちゃんと知らないままに印象だけで恐ろしげに思っていた。

千の風というのが、自分の身を切り裂くようなかまいたちのように思えてならなかったから。

元の曲の意味はまったくのぼくの誤解なわけなのだけど、そのおそしげな印象だけは、これからのぼくが体験する事にとても近い。

身を切り裂くような千の風。
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