北千住奇想曲

1

翌日は千夏とのデートだった。
前日の事もあって、ぼくの気持ちはまったくのらない。申し訳ないと思っていたが、そういうぼくの様子に敏感に察知して不機嫌になっていく。

「なんかさ、すっごい久々なのになんでそんな態度なの？」

ファンタジー盛りだくさんの世界的に有名なテーマパークに向かう途中の車の中で千夏は怒りはじめた。

ぼくとしてはいつもどおりのつもりではあったのだが、何かを感じ取ったようだ。

「そんな態度って？いつもと変わらないよ」

ぼくは諌めるように千夏に向かって言う。

「いつもと変わらない？そんな事ない。なんだか話かけても上の空。返事は適当な相槌だけ。今日はなんだか態度がおかしいよ」

そういわれて言い返すことができなかった。
確かに千夏を助手席に乗せながらもぼくはずっと谷沢藍のことを考えていた。
そして、千夏に対しても引け目のようなものを感じていたからだ。

なんとか彼女をなだめてそのまま予定通りテーマパークに向かったが、精神的に疲弊した１日だった。

それは千夏も同じだったと思う。


帰りの車の中、終始無言の状態だった。

いつもなら疲れていてもどこか夕飯を食べて、ラブホテルに行くというのが定番だったが、今日はどちらからもそんな話もでない。
< 61 / 102 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop